美醜乱漫(3)ボンジュー・ムスィウ

外国語の発音はどれも難しい。綴り字をどう読むのかということと、どうやって現地の発音に近づけるかとの2つの難しさがある。さらには、イントネーションや長音や撥音の区別を気にしたら、分かってもらえないのではないかと、発音するのが怖くなる。

フランス語では、「こんにちは」をbonjourと書く。元の意味は「良い日ですね」という意味だが、フランスでは「おはよう」、「こんにちは」、「さようなら」にも使う。カタカナでは [ボンジュール] としてよく知られているが、最後の子音 r がかすれて聞き取りにくいため、実際には [ボンジュー] と聞こえるかも知れない。[ポンジュース]と聞き間違えたという人がいるとか。

男の人には、Bonjour, monsieur!と声をかける。このmonsieurがくせものだ。すでに日本語になっているようなのでしかたがないとは思うが、細かく言えば[ムッシュー]ではない。フランス人の友人に「日本人にはこのmonsieurの発音が難しいんだ、ちょっと聞いてくれる?」といくつかの発音を試して見た。[ムシュウ]は×、日本語の[無臭]の感じ。前をのばすと[ムーシュ]となり、これは「こんにちは蠅moucheさん」と聞こえるので気をつけよう。ふざけて「ボンジュール・モッシュ」と言ったら、友人は片腹を押さえて笑い転げた。moche[モッシュ]とは、「ブス」「ぶさいく」という口語表現だからだ。つまり「こんにちは、ぶさいくさん」ということになる。みなさんは真似をしないで下さい。

筆者は良く小テストとして授業の最初に単語テストや簡単な文の書き取りをする。monsieurは学生にとって難題である。なぜなら、彼らは覚えるときにローマ字読みで覚えようとするので、[モンシエウル]と声に出して覚えるからだ。悲しいけれどこれが現実。確かに、monを[ム]と読ませるのは酷だ。もともと言葉は音でできているので、フランス人の発音に声を出して近づければいい。気楽に行こう。言葉が通じて互いが笑顔で心を通わせることが一番。しかし、今の若者は挨拶が苦手なのか、日本語でも言葉も出さないし表情でも表そうとしない。フランスではBonjour!と声を掛け合って、目を見て互いを認め合うのが最低限のマナーだから、いつもしっかりと挨拶することを学んでほしい。